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サダオさん
サダオさんは設計士として入社。
ある時、「 カナダへ赴任だよ 」 と言われた。
行きたくなかった。
英語はさっぱりできないし・・
家族はどうする?

「 行かなければクビだろう・・」
サダオさんはいやいやながら、トロントの土を踏んだのは
1982年、32才の時。
ひと月後に奥さんもカナダへ。
英語との格闘が始まった。
ふたりの子どもたちはカナダで生まれた。

今、振り返ると 「 あのカナダでの6年半が私の人生を変えた 」
「 そのあとも50年ほど人生があるわけですが、
 日本を外から見たあとの人生は、まったく違うわけです。
 見るもの、感じるものが大きく変わりましたよ。
 ですからなるべく早く海外に出ると、
 人間が大きく成長しますよ 」
と、大学生に伝えるサダオさん。

「 カナダはフランス語も公用語だから、あれも良かった。
 奥さんとフランスに旅行した時も、カナダでフランス語を
 見ていたから、なんとなくわかっちゃって・・
 やっぱりその場所にいるっていうのは違いますね。
 カナダはどこでも、看板は英語とフランス語で書かれていて、
 普通は英語が先だけど、モントリオールはフランス語が先に
 来ますね。
 だからいつの間にか、2ヶ国語のトレーニングを
 受けていたんですね 」
「 ふたりの子供にとっても、奥さんにとっても海外で暮らした
 経験は、かけがえのないものになりました 」
「 カナダに送ってくれた会社に本当に感謝していますよ 」

先週、その会社で最後の勤めを果たしたサダオさんは、
きのうから自由の身。
「 これから来る新しい日々にドキドキと期待していますよ 」
「 この週末に、学生時代を過ごした仙台に行ってみようと
 思ってます。
 1食付きで、月1万円だった下宿に住んでました。
 昔の仲間にも38年ぶりに会います。
 商店街の真ん中にあった、あの100円だった名画座は、
 もうないだろうなあ?
 あそこでは毎週、映画を観ましたよ。
 『 卒業 』 もそこで観たなあ・・」

サダオさんが大学生に言ったひと言目が
「 人間に大切なのはすべての " バランス " ですよ。
 海外に行くことがそのバランスを学ぶのに最適だし
 行かないと分からないでしょうね 」

大学生はその場で、カナダ行きを決め、
その日の最後の授業へ向かった。

週末、仙台に向かうサダオさんは、
もっと静かだった30年前とは違って、マンションが立ち並び
駅には人が溢れかえる町田市の人混みの中に消えた。
by fighter_eiji | 2009-06-02 09:59
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