子供たちへ :
夕方の5時。
ごったがえす渋谷駅の構内。
山手線に乗るために階段を上がろうとすると、
階段のたもとに、30代の男女ふたりがぼうぜんとしている。
「 どっちへ行くかわかる?」 と、エイジは太った男性の方へ。
男 「 とにかく出たいだけなんだ 」 と返事。
発音からするとアメリカン。
「 そっちに階段があるから、そこを降りれば出られるよ 」
男 「 わかった。 サンキュ 」
男のうしろにいた女性もこっちに笑顔で 「 サンキュ 」
と、ふたりは出口に向かった。
その時のふたりの笑顔は
「 なんて混んでるんだ!ここは!」
という驚きと、出口さえわからないヘンテコさ、面白さを
ミックスした表情になってエイジに同感することを求めていた。
大混雑に慣れきっている日本人は
忙しく行き交い続けていた。