『 いつか眠りにつく前に 』 (原題: Evening) - 2008年2月公開 - Lajos Koltai, Film Director ― December 12, 2007, Tokyo ― インタビュアー: Eiji Yoshikawa 『 戦場のピアニスト 』 の撮影が大変好きだ、という 『 海の上のピアニスト 』 の撮影監督ラホス・コルタイ (ハンガリー) さんが監督第2作目にあたる 『いつか眠りにつく前に』 を撮り終えた。 Straight Talk (ST): ( ラホス監督の監督デビュー作『 Fateless 』 のサウンドトラックCD を手渡して ) ここにサインしてください。 ラホス・コルタイ監督(監督): はい、いいですよ。(サインしながら) この映画は日本では公開されなかったんだってね。いったいどうしてだろう? ST: どうしてか、分かりません。どうしても観たいんです。今度、海外で DVD を買ってきますね。 ◇ 『 Fateless 』 は2002年ノーベル平和賞受賞小説、イムレ・ケルテースの 『運命ではなく』 が原作。 イムレさん本人がユダヤ人収容所で体験した実話小説をラホス監督に演出を依頼。 大御所エンニオ・モリコーネがスコアを書き、ハンガリー他、ヨーロッパ諸国で大ヒット。 インタビュー開始・・ ST: それにしても 「人が気にしていることは、それほど大したことじゃないのよ」 というヴァネッサ・レッドグレイヴのセリフは素晴らしいですね。 監督: ワーオ!ほんとにそう思いますか?それは嬉しい!実はあのセリフこそがこの映画の最重要なことなんです。あのセリフを覚えてくれていて、ボクは本当に嬉しい。 監督が両手を天に差し上げて喜ぶ監督。目が倍くらい大きく開かれて光っている。 ニコニコする監督の目は子供のようだった。 ST: はい、いろいろ名セリフはあるけど、あれは特別だし、真実です。あれを言わせた前後のタイミングもお見事。あれは世界の総人口の90%の人を救ってくれるでしょう。 監督: 気づいてくれて、本当に嬉しいなあ。実はこうして日本に来たのもそれを伝えたいからと言っても過言ではないんだ。日本人にも分かってもらえるかなあ? ST: もちろん。小さなことに悩んでいる人が多いから、あれは多くの人の精神を解放するはずですよ。 監督: 人はあまりにも忙し過ぎて、映画の登場人物のように、才能ある歌手でもさびれた店で歌っていたり、愛する人に出会っているのに、気づかなかったりするものだから。 でも、それを後悔しなくていいんだということが伝われば嬉しい。 ST: ヴァネッサ・レッドグレイヴとメリル・ストリープが一緒の場面は 「歴史的なシーンが生まれた」 と思いましたよ。 監督: 私も撮っていて 「これはすごい」 と思っていました。キャスティングにはとても恵まれた。130人目のオーディションで採用になった女優エミー・ガマーがメリル・ストリープの娘だと分かって、母親役にはメリル本人をと、考えたわけだけど、たまたま作品のメークアップ・アーティストがメリルのメークアップをずっと手がけている人だったから、彼からメリルに話してもらった。 メリルは快く引き受けてくれて、彼女は 「私はあくまでも助演者。私の名前でPR はしないで。私は単なる一出演者だから。」 と言ったよ。 また、クレア・デインズが歌うシーンがあるけど、彼女は歌の訓練は受けたことがないのに、急きょ特訓し、あのテイクは50回くらい撮ったんだ。結果は見事な歌唱。素晴らしいチャレンジ精神だよね。 ST: オープニングシーンを撮るのにはどのくらいの時間がかかりましたか? 監督: あれはずいぶんと時間がかかったよ。コンピュータ・グラフィックスは使いたくなかった。 ST: コンピュータ・グラフィックス (CG) を使ってないと知って嬉しいです。 監督: 私も嬉しい。あの瞬間は来るものなんだ。スタッフは最初、私が何を撮ろうとしているのかが分からなかったようだったけどね。 まずは場所探しに、ロングアイランド (ニューヨーク市郊外) のニューポートにある3つの浜辺を見て歩いたんだけど、子供達が遊んでいた2番目の浜辺が一番だった。 ある時間が来ると何千匹もの虫達が水平線に向かって飛んで行く。 その瞬間をとらえるために夜中の2時からずっと待ったんだ。岩場に据え付けた特殊なクレーンにカメラを載せての移動撮影だった。 撮れた時にスタッフも分かったよ。「ああ、この瞬間か」 ってね。 背景の空だけは別の時間に撮ったものに入れ替えた。そうしてあのシーンができあがったんだ。 他にもあの白い家のようにビジュアルなバックグラウンドは素晴らしかった。あの家はまるで、私の大好きなエドワード・ホッパーの絵に出てくる家とそっくりなんだ。 ST: あなたの映画はとても絵画的ですね? 監督: 私が撮影監督として、一緒に映画を撮ったイシュトバン・サボー監督と私は同じ先生の授業を受けました。映画を学んでいた頃のことです。 彼女は絵画を用いて、絵の鑑賞の仕方、構成、配置、配色、光、陰影などについて教えてくれた。特に光と影は映画撮影にとても役だった。 とてもいい先生だった。 ST: ハンガリーは多くの国境に接し、異なった民族、文化、宗教の中で暮らしてこられたはずですが、そうしたバックグラウンドを持ちながら映画を撮られていることがあなたの特徴、個性になっていると思います。 監督: 私もそう思います。 確かにハンガリーで暮らすことは周辺諸国と共存しているということです。 ジョディ・フォスターと 『 ホーム・フォー・ザ・ホリデイ 』 で一緒に仕事をした時も、彼女は私の撮り方が非常に “ヨーロピアン” だと喜んでくれた。 ハンガリーで育ち、周りの文化から影響を受けたということは私のネイチャー (本質) となっていると思うよ。■
by fighter_eiji
| 2007-12-19 09:05
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