15年くらい着ているTシャツの、肩のつなぎ目のいくつかの穴が、とうとう、つながって、パックリ口を開けた。
ちょうど通りがかった、新宿のカジュアルウェアの大型店。
入っていくと、店員が 「こんにちは!」 と大きな声で。
遠くにいた他の店員も 「こんにちは!」
「はい、こんちわ」 と私は小声で返した。
「バーゲン」と書かれた円形のラックに、手を触れた瞬間、
「そちら、大変お安くなっております!どうぞ、ごゆっくり」
ちょっと歩いて、ボタンと襟の付いたシャツのラックに触れようとしたら、「こちら、本日到着しました、最新の商品となっております!どうぞ、ごゆっくり」
誰もいない、端っこの棚に並んでいるシャツに、そーっと手を伸ばしたら、まだ触ってないのに、「こちらは、手触りもすごく良くて、大変、好評な商品です。 サイズもお探し致しますので、お申し付けください!どうぞ、ごゆっくり」
ぜんぜん 「ゆっくり」 できずに、店を出てきた。