子供たちへ :
駅のプラットフォームにあるエレベーターの脇を
通りがかった時。
ふた組のお母さんとベビーカーが待っていた。
ひと組目が乗った直後に173センチくらいある
毛皮のコートにルイ・ヴィトンのハンドバッグで
長いブーツをはいた20才くらいの女性が、
タイヤがついたトランクと一緒に横から出てきて乗り込んだ。
同時に60代の夫婦も残された母子の反対側から乗った。
小さいエレベーターは、これで満員。
ふた組目の母子は、フィリピンの人だったが黙って
寒い外に残されていた。
一瞬の印象だけど、この母子の生活は楽じゃない。
背の高いルイ・ヴィトンにエイジ
「 赤ちゃんとお母さんを先に乗せるんだよ。
それでへっちゃらか?人間か?」
ルイ・ヴィトンは、聞こえないかのように黙っていた。
エレベーター内は沈黙。
老夫婦が降りて、フィリピンの母子に場所を譲った。
泣きそうな顔をして、お母さんはベビーカーを乗せた。