人気ブログランキング | 話題のタグを見る
人間じゃない
子どもたちへ :

 「 彼らは人間じゃない 」「 鬼畜米英 」
「 外国の人間は残虐。日本に来たらみんな殺される 」
そう言って日本軍は、女性も赤ちゃんも皆殺しにする
「 三光作戦 」 を各地で展開。

 「 作家になって本を書きたい!」
 お寺育ちで、将来は作家になりたかった文学少女の
ヒロちゃん(弘子)が8歳の時に始まった戦争は、
12歳で終戦を迎えた。
 生まれて間もない妹のノリ子を子守するヒロちゃんの村にも
ひと月ほどで鬼畜進駐軍がやってきた。

 ある時、地元の大久保谷を流れる川沿いの草むらに米軍が
捨てていった大きなブリキの缶詰を見つけた。
5~6個は捨てられていたが、それは兵隊が食べ残した
ブドウの缶詰だった。
内壁についた紫のブドウを指ですくい食べた。
とてもおいしかった。

みんなが飢えている時代だった。

 当時、ヒロちゃんのお兄さんは、京都でお坊さんの修行中。
その兄に届けるための芋や米が入った布リュックを小さな
背中でしょったトシ子お姉ちゃんは、焼け野原と化した高松
の港から旅立った。
見送りの日の夜、ヒロちゃんはお母さんと一緒に満員電車で
1時間をかけて自分の村に帰っていくところだった。
 立って揺られる車内で、段々に人が減ってくるとヒロちゃんの
目の前には背丈が倍ほどもある進駐軍の兵士が
ひとり立っていた。
怖いから顔は決して見なかった。
お母さんも 「 見るな 」 と合図を送っていた。
 すると、兵士がキャンディが約40個も詰まった袋を
ヒロちゃんが握っている手提げ布バッグに入れてくれた。
顔を見上げたら、船の形のように折られた進駐軍の帽子を
被った細い顔の30代の白人が、優しい笑顔でヒロちゃんを
見つめていて、日本語で 「 キャンディ、ドウゾ 」
驚いたヒロちゃんは、家に帰ってから
「 毒だから食べてはいけない 」 という母の注意を聞かずに、
見たこともない奇麗な包み紙にくるまれたキャンディを
何個も食べた。
 こんなにおいしい食べ物を食べたことはなかった!
鬼畜と思い込んでいた米兵は、とても優しかった。
彼がヒロちゃんにキャンディを丸ごとあげたのは、
遠く故郷に残した娘を思ったのだろうか…

 ヒロちゃんに人間の優しい思いやりを見せてくれた
この兵士に対して、私は深く感謝している。
 ヒロちゃんが27才の時、難産の末、私を産んでくれた。
大人になった私は何度かヒロちゃんを海外旅行に
連れて行ったが、訪れた先々で人の親切に何度も出会った。
そのたびに 「 ほんまに優しい人が多いなぁ 」 とヒロちゃん。

 東京の電車では優先席に座っているのはマンガを読む
サラリーマンであり、化粧に夢中のルイ・ヴィトン大好き
お姉さん。
ゲームで遊ぶ小中高校生は当たり前
「 人間じゃないねぇ 」 とヒロちゃん。

 彼女は、これまでの体験を文章にし、想いを伝えている。
人間じゃない_c0157558_11154357.jpg

by fighter_eiji | 2010-04-09 11:12 | Children’s Times
<< Making a face A break >>