子供たちへ :
ある町の役所の大会議室で話し終わった。
終わったあと、いろんな人と話をしていたら
1時間以上かかった。
高校の時の野球部の上原監督も来てくれてた。
やっと駐車場に降りて、車に荷物を積んでいたら
「 一緒にご飯食べよう 」 と言って、待っててくれた
さゆみちゃんがおばあちゃんと一緒に歩いてくる。
さゆみちゃんは、エイジと保育園からの同級生。
おばあちゃんは、おばあちゃんなりにベストの
小走りで近づいてくる。
「 本を買いたくて 」
子供たちのための映画作りをしているが、
その資金になるエイジの本を買ってくれると言う。
「 きょう、お財布を忘れてて、急いで家まで帰って
取ってきたんです。間に合って良かった 」
というおばあちゃんは、一気に昔の記憶を
炎天下の駐車場で話し始めた。
「 戦争中、ピョンヤン (平壌、北朝鮮) にいたんです。
ロシア軍が来て、友達の女性も自分の家の前で
撃たれて・・
1秒に何十発も出る機関銃は、誰でも簡単に殺せて。
戦争だけは、絶対に絶対にいかんて、
あんなに悲惨なものは、ないって、それを
私も伝えないかんて思って・・」
いかに罪なき普通の人が殺されるか、
いかに戦争というものが悲惨か、
話に熱が入るおばあちゃんは、熱射で40度も
ありそうな駐車場のアスファルトの上で30分も
しゃべった。
さゆみちゃんもエイジも彼女を止められなかった。
66年前、彼女が二十歳 (はたち) の時の記憶が
彼女を苦しめ、今、伝えることの一番の重要事項。
「 1才や3才の子供たちが、どんどんやせていって
食べるものがなくて、死んでいくんですよ。
何かちょうだいって、小さい手を出すんですけど
何も渡せる食べ物がなくて・・・
戦争は、絶対にいけないんです 」