<飯塚事件>
ネガから元死刑囚と異なるDNA
2012年10月25日 毎日新聞
福岡県飯塚市で92年、女児2人が殺害された「飯塚事件」で、死刑が執行された久間三千年(くま・みちとし)・元死刑囚(執行時70歳)の再審請求をしている弁護団は25日、被害者の遺体などから採取された血液のDNA型鑑定に使われたネガフィルムを解析した結果、久間元死刑囚とは異なるDNA型が見つかったと発表。
再審弁護団は同日、「真犯人のDNA型」とする意見書を福岡地裁に提出。
福岡地裁は検察側に対し、ネガを保管していた警察庁科学警察研究所(科警研)に他の資料が残っていないか調査するよう勧告。
飯塚事件では再鑑定できるだけの試料が捜査時に使われて既になく、DNA型の再鑑定は不可能。
再審の可否を検討する福岡地裁がネガの解析結果をどう判断するか注目される。
確定判決では、久間元死刑囚のDNA型と被害者の遺体などから採取された血液のDNA型の一致が有罪の証拠の一つとなった。
弁護団は「ネガの解析結果は元死刑囚の無罪を示す決定的な証拠」と主張。
一方、福岡地検は「鑑定の内容に誤りはない」と。
ネガは科警研が「MCT118」法と呼ばれる手法でDNA型を鑑定した際の資料で、今年2月に福岡地裁が取り寄せ、弁護団が9月に複写して専門家に解析を依頼。
久間元死刑囚の型は、MCT118法で「16−26」型とされている。
被害者の遺体などから採取された血液に「41−46」型が見つかった。
一方、「16−26」型は、犯人の血液が混じる可能性がない試料からも出ていたり、不鮮明だった。
弁護団は「ネガは証拠として提出されず、『41−46』型が現れた部分を意図的に除いた現像写真だけが提出された。
科警研による隠蔽(いんぺい)行為だ」と主張。
福岡地検は「ネガも証拠として提出している。写真は書面のサイズの問題で一部を切り取っただけで、隠蔽ではない」と反論している。【遠藤孝康、川上珠実】