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元海軍兵士の願い
ある晴れた日、東京帝国ホテルの立派な部屋によばれた。背の高い80才を越えた紳士が待っていた。
コーヒーを一口すすってから「あなたにどうしても伝えたいことがある」と彼は絞り出すような声で静かにゆっくりと切り出した。

戦後数年経った頃、ASEAN / アセアンの会議に出た。マニラの飛行場に着くと各国の代表は首に花輪をかけてもらって歓迎。日本人だけ花輪はもらえなかった。
戦争でやったことがあまりにも度を越してひどかったから。

翌日、タクシーに乗って「王宮へ」と言うと、お客さんが ASEAN 会議の出席者と知った運転手は「ある場所を見てもらいたい」と、車を町外れの丘の上へ。

丘の上に立つのは焼け落ちた教会のあと。崩れた石の壁にある文字を指差す運転手。
それは日本軍に生きたまま火をつけられた一般住民が燃えながら最後の力を振り絞って壁に書いた文字。固い石の壁に自分の爪をたてて。肉親の名前だったか・・

「あのタクシーの運転手さんに感謝している。目を覚まされた」「平和な世界を望んでいるんです」と多くを話してくれた長身の元海軍兵士は、その翌年(2006年)亡くなった。
あとで聞いたことだが、あのホテルで会ってくれた時から体調はかなり悪かった。
by fighter_eiji | 2007-11-09 21:19
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