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パンとタンポポ
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給食のパン。
「きょうはサエコちゃんが休みだから、えーと、マサルちゃんに持って行ってもらおうかな?」
近所の子が、その日、学校を休んだ子のパンをその子の自宅まで持って行く。1969年頃。
田んぼのあぜ道を通り、タンポポの笛を吹き、川を右に左に飛び越えて、石の下の魚を探しながら。それでもパンを包んで入れた袋は大事に抱えて。

友達と寄り道いっぱい。遊んでいるうちに「腹減ったなぁ」。袋からパンの香りがプーン。「食べたいなぁ」でも、サエコちゃんのお母さんに渡さなきゃ。
いつも曲がるあぜ道ではなく、田んぼを3枚余分に越えて、サエコちゃんの家へ。
家の前で豆を広げて干したむしろの間を綱渡りのように歩いて、母屋と納屋の間の薄暗い空間に「こんにちは!」。犬がワンッ!と返事して驚く。
体についたホコリをパンパン払いながらおばさんが出てくる。

「パン持ってきた」
「まあ、ありがとう。気ぃつけて帰ってな」

大役を果たした少年が戻った道の両側には何千本ものタンポポが黄色いカーペットで出迎えた。
by fighter_eiji | 2007-10-27 16:41
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