![]() 10:30pm 頃、井の頭線の東松原駅の踏切内で酔っぱらったおじさんが自分の自転車を2台の乗用車の前部に次々ぶつけ、その反動で自分がレール上に大の字にひっくり返った。後頭部を打って気絶。 その直後に警報がチンチンチン。電車が来る!一緒にパトロールしていた大川ジム所属プロボクサーの三浦毅一(きいち)君(愛称:きいちゃん、18才、大学生)が非常ボタンを素早く押した。車2台はかろうじて踏切を脱出。 私は180センチはある大きなおじさんの腕をとり、レールから運び出す。通行人の若者ときいちゃんの3人で。 この踏切はカーブのため、電車が直前に来るまで、姿が見えない。見えた時はもう遅い。遮断機は既に降りている。おじさんをかついで遮断機の外まで。レール上に倒れた彼の自転車も外へ。 次に振り返った時、現場の3メートル前に急停車した渋谷行電車は私達の目前に大きな壁のように沈黙していた。 5分足らずで意識が戻ったおじさんは私達に「チクショー!お前らのバカヤロー」と叫び、蹴飛ばしたり、組みかかって来ようとしたが、ボクサーは決して手を出さない。 体重が50キロのきいちゃんは90キロあるおじさんがまた電車の行き交う線路の方に飛び出しそうなのを仕方なく押さえ込みで阻止。体を張り、排水溝脇でホコリまみれで奮闘しているその間も「放せ、バカ!この野郎!」と罵(ののし)られた。 60才を越えた大男に18才のボクサーが諭(さと)す「あんたのせいで大勢死にそうになったのが分かんないのか!」。きいちゃんは押さえる手をゆるめない。 通りがかった少林寺拳法の先生もスルリと加わり、動けないように押さえてくれた。ボクサーには分からない方法で。これは武道の正しい利用。 自転車を正面からぶつけられた1台目のドライバーのおにいちゃんが戻ってきて、猛然と怒り狂った。おじさんを踏みつぶすかという勢い。当然だ、助手席にいた奥さん共々、電車にペチャンコにされるところだった。居合わせた人達があらゆる罵声を酔っぱらいに浴びせた「こんなやつ、線路へ放り戻せ!」 通行人が呼んでくれた救急車が来たが、ただの酔っぱらいということで引き揚げ。 確かに妊婦さんや他の急患のために救急車は待機してもらった方がいい。 自転車を当てられた2台目の気の毒なドライバーのおじさんはちゃんと現場に居残り、明大前から出動した木村警察官の取り調べに応じた。被害者のおじさんは夜中で急いでいるだろうに気の毒。正直な人柄が顔に溢れていた。 東松原駅員の加藤さんと下北沢駅からとんで来た区長の金子さんも無事故という結果に胸をなでおろした。 たまたま現場に居合わせた県会議員が「あの若い隊員は何才?」「18です」と私。「へぇー!やっぱり努力してるんだね。あれだけのことを自信持って言えるんだからね」 いろんな方々のおかげで7つは救えた。2台の車の計4人の方々。大きいおじさんの命と彼の自転車と。そして人を轢(ひ)かずにすんだ運転手さんの気持ちと。 命を救った人に蹴飛ばされて、お礼などもちろんなく「バカ」と呼ばれ、手から血を流している18才のきいちゃんと一緒に帰る夜道。 喧騒から離れたふたりには、風が止み、星が黙ってキラキラしている静寂が不思議だった。やっと涼しくなった東京の夜は心地良かった。 「おまわりさんはありがとうとも言わずに行っちゃいましたね」 「酔っぱらいは本当にいやですね。どうせ何も覚えてないんですよ」と口を開いたきいちゃんは笑顔だった。 「プロテストに受かりました!」ときいちゃんが電話をくれたのはたった1週間前。1年以上前に一度落っこちたテストに合格。電話を受けた時「このライセンスはね、普通の資格と違うんだ。勇気がある人しか取れないんだからね。デパートじゃ買えないよ。大したもんだ」と私。確かにきいちゃんは勇敢。軽量級でもヘビー級のハートを持つ。合格して当然。 彼が2度と非常ボタンなんか押さなくてすみますように。 **翌朝(今朝、10月25日)、お騒がせした東松原駅へあいさつに。分かったことは、昨晩12時過ぎ、即時、警察に解放された酔っぱらいおじさんは、深夜にもう3回駅員室に現れ、ワーワーガーガー騒ぎ、暴れたこと。 今晩も来るかも。この人のせいでまた車が壊され、電車が止められるどころか、人が犠牲になるかも。 きいちゃん、今夜も出発進行。行くぜ。 ![]()
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