
シチリア島で俳優イーライ・ウォラックにきいた「セルジオ・レオーネ監督があなたを 『The Good, The Bad and The Ugly / 続・夕陽のガンマン』 に起用したのは、彼は 『The Magnificent Seven / 荒野の七人』 を観たから?」
イーライ 「No.」 「彼は 『How the West Was Won / 西部開拓史』 で私を観たんだ。手の指をこうして銃のようにして子供を撃つふりをするシーンをね」
そのシーンは見落としかねないワンシーンだが、確かにその男の凶悪性が出ている。
ローマ生まれ、ローマ育ちのセルジオ (写真:右) が 「子供も殺せるほど非情な男」 に目をつけたのは彼が戦争時代を生きたからだと感じる。彼の作品 『荒野の用心棒』 では悪党が子供の足元に弾丸を浴びせ、『ウエスタン』 でも子供に銃口を。『夕陽のギャングたち』 では地下壕で大勢のチビッ子を含む一家が虐殺される。それは戦時中のローマで実際に起こった事件を元にしているといわれる。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』 でも銃撃され、石畳に打ちつけられる少年。子供にも容赦のない戦争の非人間性を知る人の目がここに。
同級生だったエンニオ・モリコーネ (写真:左)と組んで7本の映画を撮ったが、ふたりの作る映像と音楽には世界大戦で大勢の人が亡くなり、ふたりはその犠牲の上に立って、映画を撮っているという悲しみがにじみ出る。
セルジオが子供時代に遊んだ大きな石段がローマの町外れにある。横に建つ家の石壁には 「セルジオ・レオーネ、ここに生まれ育つ」 との石碑が埋め込まれている。幅20メートル、長さ40メートルほどの石段に立つと感じる。この階段で遊んだ子達も戦場に送られ、残った者も一生その記憶を引きずったんだなと。