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マリオおじさん
役所の書類は専門用語に溢れていて、わかりづらくて、複雑。間違いは許されない。

イタリアでは 「代書屋」 という職業がローマ帝国時代からある。難しい書類を代わりに書いてあげるのが仕事。
仕事といっても折りたたみの机とイスを役所の裏口の道端に置いただけ。

南部の町ナポリに 「最後の代書屋」 といわれるマリオおじさんがいる。
ナポリの町には、小さい頃に学校に行けず、文字を書けない人も多い。外国人も多い。
マリオさんは、そうした人たちの代わりに書類を書くだけでなく、わかり易く説明し、アドバイスし、窓口まで案内してあげる。

客が来た。コートに帽子の70才過ぎのおじいさん。マリオは早速、書類上にペンを構える 「生年月日は?」
客 「ずいぶん前だよ」
マリオ 「ちゃんと日付を言ってもらわないと」
マリオ 「住所は?」
客 「この近くさ」
マリオ「 番地を言ってもらわないと」

大変な時間をかけて、やっと完成。代金は50セント。80円位だ。
どうみても、それ以上の仕事をしている。

マリオ 「それ以上はもらわないんだ。道徳と倫理的な理由でね。彼らは貧しいんだから」

次の客はやはり読み書きのできない太ったおじさん。ミラノの刑務所に入っている息子へ手紙を出したいという。
マリオおじさんは息子が喜び、立ち直れるようにと文面も相談しながら考える。

マリオは20才台の時に就職したがゼンソクのため、仕事を失った。いろいろ試したがダメだった。そんな時 「昔からある職業は?」 と考えて代書屋を始めた 「困っている人達が大勢いるんだ。助けてあげないと」 と。

時々、9才のアレッサンドラちゃんがマリオの家に来る。学校で先生にほめられたというノートを見せに来る。
アレッサンドラは1年前、学校の勉強についていけずに登校拒否。彼女のおばさん、モニカさんから相談を受けたマリオおじさんが勉強を教えて、今はすべて大丈夫。
父親がいないアレッサンドラとおばさんは週に一度、手作りのおいしい差し入れを持ってマリオの家に来る。

「学校の勉強を教えることは私にはできなかった。先生もあきらめてたの。でもマリオさんがそれをわかりやすく娘に教えてくれたの。心から感謝しているの」 とモニカおばさん。

公団アパートにひとりで暮らすマリオさんの楽しみは週に2度のダンス教室。
by fighter_eiji | 2007-12-14 22:16
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