1983年、まだ海外では寿司が珍しく、高価だった頃。
スイス人のアデルに誘われて、ニューヨークのマディスンアベニューにある、照明がきれいな立派なレストランへ。
中央に丸いカウンターの寿司コーナーがあり、日本人の板前がふたりほどで寿司を握っている。
立派なスーツやドレスの人たちが7人ほど、カウンターでもの珍しそうに眺めている。
ジーンズにTシャツの私たちは、ひとつ5ドルくらいの寿司を、2-3個食べるのが限界だった。予算の問題で (当時は1ドル=250円)
ネタは古く、寿司ごはんも全然おいしくもなかった。
当時のマンハッタンに、1軒だけラーメン屋さんもあった。
そこでしか食事をしない日本人も多かったようだ。
そんなどうでもいいことでも、時代が変わっていく過程のひとつとして、体験できて良かった。
20年経って、スイスのルガノで会ったアデルも、生まれて初めて食べたニューヨークの寿司のことをよく憶えていた。