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国境のフランク
立派な口ひげが自慢のタフガイ、フランクは不法入国者、特にメキシコ人を取り締まる。
彼は特に厳しい。「人の国に来て、迷惑かけるな!」 と叫ぶ。
ボランティアで国境警備をしているフランク達は、捕らえた人たちを、警察に引き渡す。
警察にとっては、好都合の男だ。 彼が捕えた入国者を全部、自分たちの手柄にすり替えられるから。
「二度と来るな!」 と、フランクは、着のみ着のままの彼らを国境の向こうの荒れ地に送り返す。

ある日、フランクは、生まれて初めてメキシコに行った。
追い返した彼らが、屋根のない家、水のない村、作物のできない土地に暮らしているのを見た。
病気のお年寄りが、医者も薬もないところで、ただ我慢している。
子供も病気にかかっている。
仮に医者がいても、診てもらうお金がない。
「人が生きていける場所じゃない」 とフランクは思った。

「彼らが貧しさから抜け出すために来ているのは知っていたが、俺は、本当には分かってなかった」
「法律よりも大事なことがある。実情を自分の目で見て、人の気持ちで考えることだ」

それまで、いつも怒っていたフランクの顔が、初めておだやかになった。
by fighter_eiji | 2008-01-24 20:17
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